「からだの声の翻訳家®️」鶴木マキ∬しあわせのシグナル∬

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林遣都くん見たさでみた「花芯」のあらすじと感想

林遣都が出演していた映画だったので「花芯」をみた。
瀬戸内寂聴の原作を映画化したものだ。


瀬戸内寂聴をきちんとよんだことがあるだろうか?と思うと覚えていない。
もっとも、大人にならないと読んでも……。


この話の主人公園子は戦前の人物。
第二次世界大戦後のことが中心となる。
いいなずけの雨宮(林遣都)は文学部に進学しているが、理系に転向する(これがまだ戦時中の話)。それは徴兵制を免れるため。それを主人公園子はちょっと軽蔑しているように思われる。


その後、園子は雨宮と結婚する。
園子の結婚に対しての考え方は、父親が愛人を作り、苛立ちながらもそれを許す母親という夫婦関係をみていて、「日常の決め事のひとつ」ぐらいにしか思っていない。
園子は処女であったが、最初の場面で雨宮以外の男性とキスシーンが描かれていて、第二次世界大戦前後の女学生としては進んだ人であったのだろう。



園子は全身に空虚な空気をまとった女性として描かれており、それが男性に「ほっておけない気持ち」にさせる。
遣都くんをみるつもりでみたのだったが、どうも私はこの中の雨宮の役柄が好きではない。


もうこのふたりは最初からズレていて一緒になっても続かないだろうと思った。
林遣都の美貌をもっても、私はこの雨宮を好きにならなかった。
それは主人公園子に感情移入していたからかもしれない。


前にも書いたが、文学者になりたくて文学部に進んだはずなのに、徴兵制を免れるために理系に転じ、自分の理想を捨て現実に合った生き方をする、それを
「そのちゃんに苦労をさせないため」という時点で好きになれない。


園子はそんな雨宮に興味はなく、淡々と生活を送るために決められた結婚をする。
その後、誠という男の子を産み雨宮の転勤で京都へ付いていく。


そこで、雨宮の働く支店の支店長越智と出会い一目で恋に落ちる。
越智という40近い男は、下宿に暮らしておりその下宿の未亡人(20近い年差がある)と学生時代からの関係が続いている人物。
園子と越智のふたりはこの未亡人の家で何度かマージャンを囲む。
場面ではそれほど会話がなされる訳でなく、顔の表情、目の動き、しぐさで何かを感じ取るように描かれている。


越智の話を支店内で聞かされた雨宮に園子は、未亡人宅へ行くのも越智にあうことも禁じられる。
といっても園子の住むのはこの未亡人宅の敷地内なので、朝に越智が出かける姿を窓越しに追うことは出来、涙をためた目で越智を見つめる園子を越智がどう思うかといえば、言わずもがな、なのだけど。
園子は未亡人から
「あなた、男性にやさしくされるでしょう」
といわれる、頼りなげな雰囲気を醸す美人である。


ある晩雨宮につい
「越智さんを好きになってしまった」
と告げる。日常の決め事のひとつだと思っていた夫婦の営みが出来なくなったのだった。
まだ越智との間にはっきりした気持ちを伝えたことはなく、雨宮は実家に帰そうとする。


その後、近所に住む美大生に絵のモデルになって欲しいと頼まれていた園子は絵を描いていいという。
この美大生を2016年の単発の「おっさんずラブ」で林遣都の位置にいた落合モトキくんが演じている。
彼の雰囲気がはかなげでこの役が合っている。
この美大生、実は音大受験に失敗しており園子とは川でアコーディオンを弾いていて出会うのだった。
空虚な園子だが、この美大生の前ではこころを開いた顔をしている。


だが、何日か絵のモデルをしても一向に描こうとしない美大生に対した、描かないならもう来なくていいという。


ここでやっと落合モトキの顔にクローズアップがあたりセリフが出る。
「本当は、音楽がやりたいでもなく、死ぬことが面倒だから生きているんです」
という。ずいぶん投げやりなのねという園子に
「最初にあったあなたも投げやりだった。……ただ、僕はずっとあなたが好きだった。一度でいいんです。一度だけ……」
といって園子の足を触る。


その晩(?)雨宮と床を共にしながら、
「好きでなくても、感じることができる」という。
越智となのか?という問いに首を振りながら
「好きな人に抱かれたらどうなってしまうのかしら?」
という。


ものがたりだからいいけど、この場面の雨宮は気の毒に思われる。
彼は園子をいいなずけとして幼い頃からどんな誘惑にも流されず、園子しか知らない男として描かれている。
それだけ園子に執着と愛情を持っている。その愛情で妻に向かっている時にこう言われたらどうなのよ、と思うが雨宮が実家に向けて書いている手紙にあるように
「園子のごとき自由な精神を持った女」なので許してしまう。


いいのか?雨宮それで??園子は全く雨宮に興味がないのをいまひとつ理解していない。この夫婦は最後までズレているのか?


その後、引っ越す荷造りをしている時に園子は雨宮に誠にあげるお守りを買ってきて欲しいという。
越智と最初に出会った後、貝殻に入った紅を買いに行ったのだったが、その紅を眺めながらいう。
この場面で園子が何を思ったのか観客は気がつくだろう。


雨宮がいなくなった隙に、越智に会いに行く園子。再会を約束してその場を離れる。


それから暫くして二人は旅館で逢瀬をする。
後に箱根の温泉だとわかるのだが、園子はそこで、越智への恋が終わったと感じ、越智はこれからが始まりだと感じた。
ここでまた、園子の空虚さが漂う。


越智との関係はその後もずるずると続き、園子は家を出て文筆家となる。
雨宮は離婚を許さない。越智は大家の未亡人を捨てきれずにいるが、ある晩
「おとこたちと一度の約束で関係を持つ」
という。なぜ一度かといえば
「何度も会えば情が移るから」
と。越智は園子に金を渡し
「情がないなら金を払わなければ」
という。園子というおんなは男で満たされることはないのだとここでは描かれている。
切ないやるせない気持ちは、肌を重ねた瞬間幻想であったのだと園子は思うのだろう。


幸せは男によってつくられるものではない。
精神と肉体のギャップに園子は翻弄されながら生きているように見えた。
それをきっと男性からみれば「魔性の女」と受け取られるのだろう。



『花芯』本編映像&予告編

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